大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和25年(あ)2092号 判決 1950年12月05日

主文

本件上告を棄却する。

理由

被告人本人及び弁護人永井正恒の各上告趣旨はいずれも末尾添附別紙記載の通りである。

(一)被告人本人の上告趣意に対する判断

論旨として縷述するところは畢竟原判決が認定した事実の中その一部について原判決の事実誤認を主張し減刑を求めるだけであって所論は明らかに刑訴第四〇五条に定める事由に当らない。

(二)弁護人永井正恒の上告趣意に対する判断

原判決が判示窃盗の事実を認定する証拠として第一審第一回公判調書その他を挙げていること及び右に第一回公判調書とあるのは第二回公判調書の明らかな誤記と認められること。第一回公判調書によると同公判廷においては只単に人定訊問が行われているに過ぎないのであって事実の取調は第二回公判廷において初めて行われていることは所論の通りである、そして第一審における第二回公判調書には論旨指摘のような記載があるのみで特に被告人に対し第一審裁判官が本件起訴状を読み聞かせその他具体的に本件犯罪事実について質問した点の記載のないことも亦所論の通りである、然し強制、拷問、脅迫による自白や不当に長く抑留又は拘禁された後の自白に当らない自白その他任意性のある自白が総て自白として証拠力のあることは刑訴第三一九条第一項に明らかに規定しているところであって第一審における第二回公判廷において裁判官から被告事件について陳述することがあるか否かについて尋ねられたのに対し被告人が事実はその通りであって別に争うことはない旨述べたことは正に右にいわゆる証拠力のある自白に該当するものと言わなければならない、そして原則として当事者訴訟主義を採用した新刑訴法の下においては検察官が起訴状を朗読するのみで旧刑訴第一三四条が規定していたような裁判官による公訴事実開示の手続をする必要はなくなったのであるから所論のように第一審裁判官が本件起訴状を被告人に読み聞かさなかったことは当然で論旨指摘の判例(昭和二三年(れ)第一八二号昭和二三、五、四、第三小法廷判決集二巻五号四四一頁参照)は旧刑訴法の下におけるものであって本件には適切な判例でない、果して然らば原判決が前記被告人の自白と右自白を補強するに足るものと認められる他の証拠とによって原判示の窃盗の事実を認定したことは相当であって毫も違法はない、論旨の違憲論は独自の誤った刑訴違反論を前提とするもので憲法の問題ではない、刑訴四一一条を適用すべき事由も見当らない。

よって刑訴四〇八条に従って主文の如く判決する。

右判決は関与裁判官一致の意見である。

(裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 井上登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例